薬機法 第十六章 雑則 第八十条の二 治験について
(治験の取扱い)
原文
第八十条の二 治験の依頼をしようとする者は、治験を依頼するに当たつては、厚生労働省令で定める基準に従つてこれを行わなければならない。
2 治験(薬物、機械器具等又は人若しくは動物の細胞に培養その他の加工を施したもの若しくは人若しくは動物の細胞に導入され、これらの体内で発現する遺伝子を含有するもの(以下この条から第八十条の四まで及び第八十三条第一項において「薬物等」という。)であつて、厚生労働省令で定めるものを対象とするものに限る。以下この項において同じ。)の依頼をしようとする者又は自ら治験を実施しようとする者は、あらかじめ、厚生労働省令で定めるところにより、厚生労働大臣に治験の計画を届け出なければならない。ただし、当該治験の対象とされる薬物等を使用することが緊急やむを得ない場合として厚生労働省令で定める場合には、当該治験を開始した日から三十日以内に、厚生労働省令で定めるところにより、厚生労働大臣に治験の計画を届け出たときは、この限りでない。
3 前項本文の規定による届出をした者(当該届出に係る治験の対象とされる薬物等につき初めて同項の規定による届出をした者に限る。)は、当該届出をした日から起算して三十日を経過した後でなければ、治験を依頼し、又は自ら治験を実施してはならない。この場合において、厚生労働大臣は、当該届出に係る治験の計画に関し保健衛生上の危害の発生を防止するため必要な調査を行うものとする。
4 治験の依頼を受けた者又は自ら治験を実施しようとする者は、厚生労働省令で定める基準に従つて、治験をしなければならない。
5 治験の依頼をした者は、厚生労働省令で定める基準に従つて、治験を管理しなければならない。
6 治験の依頼をした者又は自ら治験を実施した者は、当該治験の対象とされる薬物等について、当該薬物等の副作用によるものと疑われる疾病、障害又は死亡の発生、当該薬物等の使用によるものと疑われる感染症の発生その他の治験の対象とされる薬物等の有効性及び安全性に関する事項で厚生労働省令で定めるものを知つたときは、その旨を厚生労働省令で定めるところにより厚生労働大臣に報告しなければならない。この場合において、厚生労働大臣は、当該報告に係る情報の整理又は当該報告に関する調査を行うものとする。
7 厚生労働大臣は、治験が第四項又は第五項の基準に適合するかどうかを調査するため必要があると認めるときは、治験の依頼をし、自ら治験を実施し、若しくは依頼を受けた者その他治験の対象とされる薬物等を業務上取り扱う者に対して、必要な報告をさせ、又は当該職員に、病院、診療所、飼育動物診療施設、工場、事務所その他治験の対象とされる薬物等を業務上取り扱う場所に立ち入り、その構造設備若しくは帳簿書類その他の物件を検査させ、若しくは従業員その他の関係者に質問させることができる。
8 前項の規定による立入検査及び質問については、第六十九条第六項の規定を、前項の規定による権限については、同条第七項の規定を準用する。
9 厚生労働大臣は、治験の対象とされる薬物等の使用による保健衛生上の危害の発生又は拡大を防止するため必要があると認めるときは、治験の依頼をしようとし、若しくは依頼をした者、自ら治験を実施しようとし、若しくは実施した者又は治験の依頼を受けた者に対し、治験の依頼の取消し又はその変更、治験の中止又はその変更その他必要な指示を行うことができる。
10 治験の依頼をした者若しくは自ら治験を実施した者又はその役員若しくは職員は、正当な理由なく、治験に関しその職務上知り得た人の秘密を漏らしてはならない。これらの者であつた者についても、同様とする。
分かりやすく
第八十条の二
第1項
治験の依頼をしようとする人は、厚生労働省令で定める基準※に従って依頼をしなければならない。
※薬機法 施行規則 第二百六十九条 治験(薬物を対象とするものに限る。以下この条から第二百七十三条までにおいて同じ。)の依頼をしようとする者又は自ら治験を実施しようとする者は、あらかじめ、治験の計画に関し、次の事項を厚生労働大臣に届け出なければならない。
一 治験の対象とされる薬物(以下「被験薬」という。)の成分及び分量
二 被験薬の製造方法
三 被験薬の予定される効能又は効果
四 被験薬の予定される用法及び用量
五 治験の目的、内容及び期間
六 治験を行う医療機関の名称及び所在地
七 医療機関において治験を行うことの適否その他の治験に関する調査審議を行う委員会の設置者の名称及び所在地
八 治験を行う医療機関ごとの治験に係る業務を統括する医師又は歯科医師(次号において「治験責任医師」という。)の氏名及び職名
九 治験責任医師の指導の下に治験に係る業務を分担する医師又は歯科医師がある場合にあつては、その氏名
十 治験を行う医療機関ごとの予定している被験薬及び被験薬と比較する目的で用いられる医薬品又は薬物その他の物質を交付し、又は入手した数量
十一 治験を行う医療機関ごとの予定している被験者数
十二 被験薬を有償で譲渡する場合はその理由
十三 治験の依頼をしようとする者が本邦内に住所を有しない場合にあつては、被験薬による保健衛生上の危害の発生又は拡大の防止に必要な措置を採らせるため、治験の依頼をしようとする者に代わつて治験の依頼を行うことができる者であつて本邦内に住所を有する者(外国法人で本邦内に事務所を有するものの当該事務所の代表者を含む。)のうちから選任した者(次条及び第二百七十一条において「治験国内管理人」という。)の氏名及び住所
十四 治験実施計画書の解釈その他の治験の細目について調整する業務を医師又は歯科医師に委嘱する場合にあつては、その氏名及び職名
十五 治験実施計画書の解釈その他の治験の細目について調整する業務を複数の医師又は歯科医師で構成される委員会に委嘱する場合にあつては、これを構成する医師又は歯科医師の氏名及び職名
十六 治験の依頼をしようとする者が治験の依頼及び管理に係る業務の全部若しくは一部を委託する場合又は自ら治験を実施しようとする者が治験の準備及び管理に係る業務の全部若しくは一部を委託する場合にあつては、当該業務を受託する者の氏名、住所及び当該委託する業務の範囲
十七 実施医療機関又は自ら治験を実施しようとする者が治験の実施に係る業務の一部を委託する場合にあつては、当該業務を受託する者の氏名、住所及び当該委託する業務の範囲
十八 自ら治験を実施しようとする者にあつては、治験の費用に関する事項
十九 自ら治験を実施しようとする者にあつては、治験薬を提供する者の氏名又は名称及び住所
2 前項の届出には、被験薬の毒性、薬理作用等に関する試験成績の概要その他必要な資料を添付しなければならない。
第2項
治験※1の依頼をしようとする人や自分でする人は、前もって、厚生労働大臣に治験の計画を届け出なければならない。
ただし、その治験対象の薬物等をすぐに使わないとやばいと思われる場合※2は、治験開始日から30日以内に、厚生労働大臣に治験の計画を届け出てもいい。
※1ここでの治験対象は以下(第八十条の二~第八十条の四まで「薬物等」とする)
・薬物、機械器具等
・人、動物の細胞に何か細工(培養とか)加えたもの
・人、動物の細胞に導入後に、これらの体内で発現する遺伝子を含有するもの
※2 どういう状況かは、薬機法施行規則 第二百七十二条
法第八十条の二第二項ただし書に規定する場合は、その治験に係る薬物が次の各号のいずれにも該当する場合とする。
一 被験者の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある疾病その他の健康被害の防止のため緊急に使用されることが必要な薬物であり、かつ、当該薬物の使用以外に適当な方法がないものであること。
二 その用途に関し、医薬品の品質、有効性及び安全性を確保する上で本邦と同等の水準にあると認められる医薬品の製造販売の承認の制度又はこれに相当する制度を有している国において、販売し、授与し、並びに販売又は授与の目的で貯蔵し、及び陳列することが認められている薬物であること。
三 治験が実施されている薬物であること。
第3項
初めてその治験対象の薬物等の治験依頼の届出を厚生労働大臣にした人は、届出をした日から30日後でなければ、治験を依頼したり自分で治験をやってはいけない。
このとき、厚生労働大臣は、届出に書いてある治験の計画について健康上の危害の発生防止のために必要な調査を行う。
第4項
治験の依頼を受けた人や自分で治験をやろうとする人は、厚生労働省令で定める基準に従って、治験をしなければならない。
第5項
治験の依頼をした人は、厚生労働省令で定める基準に従って、治験を管理しなければならない。
第6項
治験の依頼をした人や自分で治験をやった人は、治験対象の薬物等について以下のことを知ったら、そのことを厚生労働大臣に報告しなければならない。
このとき、厚生労働大臣は、その報告に関する情報の整理や調査を行う。
・その治験対象の薬物等の副作用によるものと疑われる疾病、障害、死亡の発生
・薬物等の使用によるものと疑われる感染症の発生などの治験対象の薬物等の有効性及び安全性に関する事項で厚生労働省令で定めるもの
第7項
厚生労働大臣は、治験が第4,5項の基準に適合するかどうかを調査するために必要だったら以下のことをすることができる。
・治験の依頼をしたり、自分で治験をやったり、依頼を受けたりなどとにかく治験対象の薬物等を業務上取り扱う人に対して、必要な報告をさせる。
・職員に、病院、診療所、飼育動物診療施設、工場、事務所など治験対象の薬物等を業務上取り扱う場所に立ち入らせ、その構造設備、帳簿書類などの物件を検査させたり、従業員などの関係者に質問させることができる。
第8項
第7項の立入検査や質問は、第六十九条第6項の規定を、権限については、第六十九条第7項の規定を準用する。
※薬機法 第六十九条第6項
当該職員は、前各項の規定による立入検査、質問又は収去をする場合には、その身分を示す証明書を携帯し、関係人の請求があつたときは、これを提示しなければならない。
薬機法 第六十九条第7項
第一項から第五項までの権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
第9項
厚生労働大臣は、治験対象の薬物等を使うと健康上の危害の発生したりとそのままさせると何か問題ありそうだと思ったら、治験の依頼人などに、治験の依頼の取消しやその変更など必要な指示を行える。
第10項
治験の依頼をした人や自分で治験をやった人、その役員や職員は、正当な理由ないのに、治験について職務上知り得た人の秘密を漏らしてはいけない。治験やった人でも駄だめ。